しょぼくれライフ

バイク趣味のしょぼくれた老ライダーです!高齢者の立場からの各種バイク批評のブログです。

ちょっと待った!新型スーパーカブ110


ホンダの看板車種スーパーカブがモデルチェンジ、新型JA59が4月14日から発売されました。

新型はどう変わったのか、まずは外見、旧型の画像と比較すればその違いが一目瞭然です。

新型はキャストホイールです。当然タイヤはチューブレスになります。しかもフロントはディスクブレーキでABS装備。新型はパンクに強くなり、制動力も大幅にアップされています。

メーターパネルには時計・ギヤポジション・トリップ・平均燃費計までついて、ずいぶん便利になっています。
最大トルクは旧型JA44よりも0.25N.m上がって、燃費が6km/L向上しています。バイク雑誌の解説では、ホンダの設計コンセプトが従来の実用重視から、レジャー重視へと転換されて今回の大幅改良となったとの事。
 そうならば、もはや旧型のメリットを敢えて振り返る理由はないのではと思えてきますが、

    ちょっと待った!

多くの点で改善された新型なんですが、手放しで評価できない面もあります。

まず、今回採用された新型エンジン。ロングストローク化されボアスト比は1.34になりました。旧型は1.11ですからこの面だけを見れば低速重視のエンジンです。

ちなみに1982年型スーパーカブ70のボアスト比は0.88のショートストロークでした。燃費向上のため、一貫してロングストローク化してますね。旧型JA44のさらに前は中国生産のJA10、同じエンジンでも前後スプロケは14/34でしたが、日本組立のJA44は14/35でスプロケもややローギヤ化していました。厳しい排ガス規制への対応もありますが、このローギヤ化が幹線道路での鈍速感につながり、フロントスプロケ1丁上げがカブ主の定番になったのは当然の結果だったのです。しかも速度はフロントホイールのメーターギアからの計測で、スプロケ丁数の変更による計測誤差が生じないメリットがありました。

ところが、新型JA59はフロントブレーキのディスク化で、速度センサーはカウンターシャフトに取り付けられています。つまり、フロント1丁上げはメーター誤差を余儀なくされます。丁数変更が機構上できないのに、ロングストローク化です。新型のリアスプロケが1丁でもハイギア化していたら、鈍速の緩和になりますが、新型の前後スプロケは旧型と同じ14/35のままです。

新旧スーパーカブ110の変速比を見てみましょう。新型JA59が低速型である事が明白です。
旧型:1速2.615 2速1.555 3速1.136 4速0.916
新型:1速3.142 2速1.833 3速1.333 4速1.071

減速比(1次/2次)についても 
旧型: 4.058/2.5
新型:   3.421/2.5

新型はより低回転でトルクを発生させる構成です。しかもエンジン自体がロングストロークの低速型ですから、幹線道路でのクルマの流れに合わせると振動が大きくなります。
 装備は素晴らしいのに、肝心の「走り」をユーザーの好みでカスタマイズする事ができないまま、旧型より一層低速型のバイクに仕上げられていては、幹線道路を多用するユーザーには不満が出てくるはずです。

制動力アップはクルマの流れに安全に乗れるようになるはずなのに、速度が思うように伸びないのであれば、単なる宝の持ち腐れです。まだ試乗してもいないうちから、新型への疑問なんて拙速ではありますが、現在知りうる情報だけで判断すると、こんな疑念を抱かざるを得ません。


昨年考察したインドホンダのバイクCD110です。新型スーパーカブと同じロングストロークエンジンで、ボアスト比1.34も全く同じ、クラッチ操作が必要ながら、カブと同じMT4速で、燃費はカブを上回ります。タンク容量が大きく、航続距離はスーパーカブの3倍にもなります。ただ残念ながらロングストロークに加え、前後スプロケが14/42、超鈍速構成ですから日本での使用にはスプロケ交換必須のバイクです。幸い、メーターはフロントのギヤ計測で面倒な補正要らずで、使い勝手は抜群です。
 新型スーパーカブの前後スプロケは14/35なのでCD110ほど超鈍速ではありませんが、変速比や減速比はCD110よりも低速走行型になっています。ホンダは新型スーパーカブを実用本位からレジャー重視へ振ったのですから、配達や買い物での生活道路中心を志向した旧型から、幹線道路でも快適にすべき新型のコンセプトならば、ギヤ構成も見直すべきだったのです。それをしなかったのは大いに疑問です。

とはいえ、既に店頭には新型のまばゆい姿があり、多くのカブ主たちの目を引きます。

いい感じですね、私も大いに興味があります。
しかし、よくよく考えてみれば、新型に目を奪われるあまり、旧型の意義を見失うのはとても残念な事だと私は思った次第です。

 旧型JA44は前後ドラムブレーキやスポークホイールなど昔ながらのカブらしいスタイルを残す最後のスーパーカブであり、しかも最新のFi車でありながら、スプロケ交換の自由度が高い貴重なスーパーカブだったことを痛感しています。

今回は少ない情報からの記事でしたので、今後新しい情報が得られ次第、記事内容を随時更新・修正させていただきます。