しょぼくれライフ

バイク趣味のしょぼくれた老ライダーです!高齢者の立場からの各種バイク批評のブログです。

ついにHero Xpulse200に乗った!


Hero Xpulse200、満を持して試乗してきました!とてもいいバイクでした!エンジン等の耐久性が国産車と遜色なければ、大いに日本でもファンは増えると思います。詳細は当記事最後にレポート。まずは以下、過去記事よりご覧下さい。

6月21日

インド最大手Hero Moto Corp(ヒーロー)の軽量アドベンチャーXpulse200は、発表された2018年から日本でも評判になっていました。私もどこか輸入しないかなと気になっていたのですが、なかなか日本に入って来ませんでした。しかし、ついにバイク館(SOX)が6月から輸入に向けて現地代理店との交渉を行っていると聞きました。日本での価格が妥当な額になるのなら、輸入に踏み切る可能性が出てきたわけで、オフ車ファンには朗報です。

Heroは日本ではなじみのないブランドです。それもそのはす、設立は1984年でまだ40年にも満たない若い会社です。しかし、年間生産台数は約2500万台、従業員数は約8600人にもなります。対してホンダは年間約1000万台、熊本製作所の従業員数が約2600人です。Heroの規模はホンダの2倍から3倍もある世界最大のバイクメーカーであり、いずれは日本市場に本格進出するはずですから、今回のSOX経由はその試金石なのでしょう。
肝心のXpulse自体については日本未上陸ですから、当然インプレも詳細記事もないので、現地インドのPRサイトを参照します。

油冷単気筒、Fi5速、前後タイヤサイズ21/18のオフロード型フルサイズ。

タンク容量は13リットル、装備重量157kg。前後ディスクブレーキ、

前輪にはシングルチャンネルのABS、

メーター内に簡易型ナビ装備。

頑丈なスキッドプレート

フロントライトはLED、シールド付き

テンダムバー付きリアキャリア装備

両側エンジンガードも装備

厳しい排ガス規制対策に触媒コンバーターが装着されて、エキパイはクランクケース下部を通っています。

しかし2019年発売当初のXpulse200はオフ車らしく、エキパイはエンジンサイドからサイレンサーに伸びていましたが、翌年には燃料供給がキャブレターからFiへ変更、その上でインドの深刻な大気汚染に対応するため、厳しい排ガス規制BS6(EURO5相当)をクリアする特大の触媒経由となりました。そのため不自然極まりないエキパイルートに変更されました。排ガス規制がいかに過酷であるかをよく示しています。

さてインドBS6(EURO5)に適応した2020年、Xpulse200は「インドモーターサイクルオブザイヤー」を受賞しています。世界の二輪市場の4割を占め世界最大のインド市場で最高の栄誉に輝いたのです。同賞は2017年にスズキのジクサー150も選出されており、Xpulseも信頼に足るバイクだとの折り紙付きになりました。翌年の2021年、排ガス規制で低下したパフォーマンスを補う、4バルブの4Vが追加投入されています。なお現地ファンサイトでは、報告された燃費の平均は50km/L。航続距離は600kmにも達しているようですから、エコ性能も相当高いようです。

日本メーカーが放棄した軽二輪空冷オフ車がインドで健在、Xpulse200は厳しい排ガス規制を見事にクリアし、フルサイズオフロードバイクとして存続、抜群の航続距離は600kmを超えるのですから、オフ車系アドベンチャーのカテゴリーでは有力なバイクです。車体は空(油)冷単気筒にしては重い車重ながら、サイズ的には日本の道路環境ではジャストサイズなのもうれしいです。
価格は円安前では日本円換算で17万円程度でしたから、この時点で日本に輸出されていたら税込28万円程度を実現していた可能性がありました。しかし現下の円安相場、輸入価格をグンと押し上げてしまうので、とても残念でなりません。
現地ホームページでは、オフ車色を前面に出してアピールしています。とてもカッコイーです。


インドの厳しい排ガス規制をクリアしているだけあって、スペック的にはややパワー不足かもしれません。またメーカーとしての信頼度も気になりますが、かつてホンダとの合弁時期があり、日本の技術を学んで成長したメーカーとのことですから、日本では無名のブランドでも存外、造りはしっかりしているのかもしれません。

4バルブの4Vにはカラーは3色で



2バルブの2Vには4色




後発の4Vは2Vとの差別化で、とてもセンスのいいカラーリングが施されてオシャレ、4バルブ化効果から高回転で性能を発揮するタイプです。2Vはカラーリングがやや地味な印象を受けますが、Xpulseを日常ユースで使うなら、中低速型の2バルブが実用的で、燃費の面からも2Vが有利かと思います。

このバイクのスタイルやスペックを考えると、驚くほどスズキのジェベル200と似ている事に気づきます。

スズキがこの名車に与えたオフ車系アドベンチャーとしてのコンセプトは、HeroのXpulseに通じると思います。言い換えれば、Xpulseはインド版ジェベルとして再来したとも言えるのです。

そのジェベルと今回のXpulseとの性能比較表です。同じコンセプトで同一排気量ですからあたかも相似形かのように酷似していますが、決定的な違いは車重、Xpulseはジェベルよりなんと30kgも重いのです。パワーウェイトレシオ(数値が低いほど俊敏な走り)は8.82kg/PSでジェベルより2.2劣り、4Vでも1.97劣ります。今をときめくカワサキのZX25Rのパワーウェイトレシオは3.97kg/PSと驚異的な数値。Xpulse200/2Vとの差は4.85にもなります。ジャンルが全く違いますからXpulseをZX25Rと比較するのは酷なのですが。ちなみに重いけど旅バイクとして人気のVストローム250はパワーウェイトレシオは7.75で、Xpulseとの差は1.07、Xpulse200はVストローム250よりも遅い致命的な鈍足バイクということになります。つまりXpulseはデータをみる限り、走りはまず期待できません。私のような高齢者には問題ありませんが、若いユーザーならけっこうストレスのたまるバイクかもしれません。

さて、日本ではジェベルはおろか国産最後の空冷オフ車セローもなくなり、日本の道路事情や日本人の体格に最も合理的なカテゴリーがもはや海外製しかないのは本当に寂しい限りです。繰り返しますが、そういう意味でHeroのXpulseはとても貴重な存在なのです。


スズキはインドでVストローム250SXを登場させており、日本での正規販売も決めています。日本仕様は2023年夏に販売が始まるそうです。そうなると日本初上陸のHeroブランドは不利かもしれませんが、カワサキのオフ車KLX230が国内販売終了、正規販売の空(油)冷オフ車が日本ではいなくなります。空冷の中国製CRF190Lが日本に入ってきましたが、乗り出し54万円で並行輸入車としては割高です。バイク館(SOX)がオフ車系アドベンチャーXpulse200の早期販売を実現し、税込車両価格30万円台半ば、乗り出し40万円台前半というような戦略的低価格を採用すれば、このXpulseはジェベルやセローの穴を埋めるべく、日本市場で受けいられる可能性があると私は考えます。

国産メーカーはラインナップを今後さらに1割削減するようですから、狭くなる一方の日本市場にあって、バイク館(SOX)のHero輸入販売が実現すれば、日本のオフ派ライダーに僅かでも選択肢を残すものであり、大いに歓迎すべきものだと思います。

追記
7月20日、バイク館(SOX)は販売を正式決定しました。4バルブは約37万円(税込)、2バルブは約35万円(税込)です。ただし、乗り出し価格はどちらも9万円アップで、2バルブでも約44万円。最短で9月の納車開始、現在予約受付中とのことです。

車両価格だけなら戦略価格ですが、バイク館(SOX)の諸経費は他社より高いので、乗り出し価格は日本初上陸のインドメーカーにしては高く感じます。しかし、オイル40L無料サービスで割高感はある程度緩和され、しかも2年間保証の安心感があります。ましてやオフ車としてはほぼフル装備である事を考えれば、結果的に妥当な価格設定かと思います。

耐久性が懸念されますが、こればかりはある程度の期間や距離を乗ってみないと分からないものです。今回、初回入荷分で購入される方は、俗に言う「人柱」の役割を担う事になります。
4V

2V

日本で全く未知のブランドを試すことになるこのXpulse200、途上国のバイクという先入観が強いと不安感を拭えませんが、インドは前途洋々のBRICsの一角であり、今後10年程度でGDPで、日本を抜き去る準先進国です。その技術水準を窺い知る良い機会なのかもしれません。

SOX店でしかメンテナンスを受けられず、メーカー保証はなく、長期の部品待ちもざらで、二束三文の下取り価格といういくつものリスクがありながらも、バイク館(SOX)で輸入車購入を検討する場合、そうしたリスクやハンディを受忍できるだけの激安価格であれば、購入に踏み切れるのです。しかし超円安相場や品薄が続けば、国内正規販売車に近い高い価格を負担しながら、リスクだけをユーザーが抱えることになります。ましてやアジア自体がコロナやコンテナ不足で深刻な生産停滞、これではバイク館(SOX)などの並行輸入業者は、日本市場のニッチ(隙間)を格安輸入車で上手く埋める事で成り立ってきただけに、たいへん厳しい経営環境になります。
ユーザーが望むような車両が入って来ない、入って来ても高価格で客足が遠のく、こうした苦境の中でのXpulse200の販売決定でしたから、ぜひ市場での高評価を得て、販売面で成功してもらいたいし、それはユーザーにとっても望ましい事だと私は思います。
まずもって早く実車を見てみたいものです。

再追記
10月8日、ついに待望の実車に会えました。
4Vの青黒

2Vの白

オフ車らしい逞しさとアドベンチャーらしい装備が見事に融和していて、使い勝手の良さを期待できるいいバイクでした。



メインカラーは白青で売れ筋かと思いますが、店頭にあった青黒もなかなか魅力的でした。

見えないクランク下のスキッドプレートは厚いアルミ製、ペラペラの樹脂製の多いライバル車よりも安心ですから、ある程度のガレ場も入れそうです。

油冷とは言いながら単なるオイルクーラーだけの事かと思いきや、この通り4Vはオイル噴射パイプを装備した文字通りの油冷エンジンですが、2Vにはオイル噴射パイプがありません。

4Vが油冷エンジンらしいというよりも、4バルブの高回転化で相当な高温になるので、オイル噴射パイプが必要なのでしょう。プラグ位置を上に移動させ、パイプが取り付けられています。高回転で回す走行頻度が高いと、個体によってはオイル漏れ、もしくはエンジンの焦げ付きが生じるかもしれませんね。4Vはある程度の走りは見込めますが、未確認のリスクがありますから、心配な方は2Vの方が鈍足でも無難な買い物かもしれません。

ABS装備で制動面でも日本の安全基準を満たしています。またブラックリムが心憎いほどの精悍さです。

フロントフォークはブーツを装着し、上部は防錆塗装が施されていています。また、アップフェンダーゆえの跳ね上げを防ぐ後方インナーフェンダーが実用性の高さを示しています。

丸目ながらLEDライト、ナックルカバーも嬉しい装備です。冬も心強い配慮です。

シート下には小物スペースがあり、ETCは余裕で収納できます。
跨がらせていただきましたが、私(身長173)には足付きに不安のないちょうどいいサイズでした。クラッチも軽く乗車姿勢が楽で、航続距離も600kmを越えますから、ツーリングバイクとして大いに期待できます。フル装備オフ車アドベンチャーが乗り出し40万円代半ばなら、初輸入の外車であってもけっして高くはないと私は思いました。

なお、お店によると、Xpulse200の速度計は前輪にセンサーを付けて計測しているとのことでした。

前述のジェベルとの比較表でお示ししましたようにXpulse200とスズキのジェベル200はよく似ていますが、ジェベルの前後スプロケ丁数(歯数)は15/45であるのに対して、Xpulseの前後スプロケ丁数は13/45です。ジェベルでさえローギアードでハイギアード化する方が多かったのですから、Xpulseはファームバイク並みの超ローギアード。フロントスプロケをせめて2丁上げる必要があります。

日本において幹線道路・バイパスや高速道路を走行すれば、相当な過回転になります。しかし速度センサーが前輪ならハイギアード化の丁数変更で速度等に誤差は生じません。Xpulse200を日本の道路事情に合わせるためのハイギアード化は構造上可能で、適合品が手に入ればユーザーには嬉しい仕様ですね。

ただ、インドホンダのバイクもそうでしたが、個体差がひどく新車なのに品質管理にムラがあり、このように白錆が見受けられる車体もありました。スターターとインマニが白錆で真っ白です。

フロントフォークのケーブルフックはどの店の個体も錆びていました。

国産車並みの完璧な品質を求める方には悩ましいインド品質なのでしょうか。購入時にはよく観察して白錆の少ない車体を選びたいですね。


なかなか軽量アドベンチャーらしい装備でスタイルもカッコイーのですが、前述比較表での厳しいパワーウェイトレシオ。200ccのエンジンだとこの車重は相当不利なので4Vが投入されたのですが、根本的には排気量をせめて50cc増やすべき車重だと思います。
 品質や加速性能にも不安がありますが、それでもXpulseはよく造られたいいバイクだと私は思います。空冷(油冷)単気筒でありながらEURO5をクリアする希少なオフ車であり、林道から高速道路まであらゆる道を駆け抜けて、日本の美しい四季を楽しめる旅バイクになる可能性が大いにあります。
HeroXpulse200を日本に入れてくれたSOXに感謝したいと思います。

再々追記
10月22日(土)。名古屋みなと店にXpulse4Vの試乗車が入ったそうなので、私も行ってきました。一番乗りだったようで、ピカピカの新車に乗る機会をいただき、とてもありがたかったてす。バイク館(SOX)での試乗はとても大らかで、30分間自由に乗っていいとのことで、4バルブの走りっぷりを体感すべく、港区らしい田園地帯にさっそく繰り出しました。



色はレッド、とてもハイセンスなカラーリングです。さて肝心の走り出しは、正直やはり鈍重です。車重がありますから当然ですが、もう少し低速での軽やかささが欲しいです。印象としては原付二種並みです。しかし幹線道路では軽二輪らしくきちんと流れに乗れました。そして、直線の長い農道に入り、アクセルをグッと回したところ、流石に気持ち良く加速していきます。やはり4バルブの効果が表れます。ただ、スプロケ交換でハイギアード化すれば、出だしも含めてもっとキビキビした走りになると思いました。このXpulseはスプロケ交換必須のバイクだと改めて思いました。

 取り回しは意外に軽く感じました。たぶん車高が低く重心が低いからだと思います。タチゴケはしにくいバイクだと思います。シートもソフトで長時間乗車にも耐えられそうです。燃費がわからないと航続距離も正確には判断できませんが、根拠はないものの今回の試乗での感じではリッター50kmはないと思います。4Vはおそらく40km/L程度、2Vでも45km/L程度ではないでしょうか。その推測が正しければ航続距離は4Vが最大500km、2Vで550kmくらいかなと思います。当初の現地データの引用値よりは少なくても、それでもアドベンチャーとしては立派な航続性能だということになります。あくまでも勘にすぎませんが。
 シールドは小さすぎます。風防効果はあまりありません。メーターバイザーだと割り切った方がいいです。インドでは人気車ですから、後々社外品のシールドが入って来るかもしれません。なお白錆については、この試乗車については

この通り全くありません。個体差が激しいですね。買うときはその点をしっかりチェックすべきです。私が現時点で思うのは、白錆はどうもインド品質というだけではなく、配置されたお店の立地や商品管理も影響しているかもしれません。

試乗してみてXpulseの良さは見た目だけではなく、真のデュアルパーパスらしさに裏打ちされた魅力ある一台であることがよくわかりました。パワーがないので爽快な走りは期待できませんが、取り回しはまずまず軽快で、高速道路も使う長距離ツーリングを、マイペースで楽しめるバイクだと実感できました。Heroのバイクは遠からず日本でもよく見かけるようになるでしょう!

試乗させていただいたSOX名古屋みなと店のスタッフの皆様ありがとうございました。

納車された方のインプレもしくはバイク雑誌での記事を早く読んでみたいものです。