
一昨年から話題になっていたBMWのミドルクラスアドベンチャー、F450GSの正式発表とともに受注が5月19日開始、発売は9月とのことで、日本でも長らく切望されていたオフ車系アドベンチャーの400ccクラスに、ドイツの名門BMWが性能・スタイル・価格どれをとっても並外れた新型車を投入します。
このアドベンチャー界の驚異に直面する同一排気量帯での日本車は、今のところ(2026年5月現在)ロードバイクベースのホンダのNX400(6月発売)だけです。

現代版デュアルパーパスとしてのアドベンチャーはアフリカツインを筆頭とするリッターオーバーの重量級、トランザルプやテネレ、Vストローム800のミドルクラス、やや系統は異なりますが、ヴェルシス650。そして日本では最もユーザーの多い軽2輪クラスにVスト2車種、CRFラリーがいます。昨年まではスズキから650ccのVストがいましたが生産終了。大雑把にまとめれば日本的には650・700・800は大型なので、国産メーカーからはNXを除いて、大型と小型(250)しかありませんし、ましてやオフ車系ミドルアドベンチャーは今のところいません。従ってF450GSは現状では日本市場では、唯一のオフ車系ミドルアドベンチャーということになります。
大型は所有感はあっても取り回しが不便で、小型は取り回しはしやすくても、高速道路を使っての快適移動にはパワーが不足する。従って実用で考えれば400ccクラスの真正ミドルクラスこそ日本の道路事情や平均的日本人の体格では最も合理的です。
昨年まではロイヤルエンフィールドのヒマラヤ450に私は大いに興味を持ちましたが、ディーラー網の連携難がネックだと感じていました。そこに、その難点をクリアできる全国70店舗のモトラッド網を持つ名門BMWがまさに真正ミドルクラスのF450GSを投入します。
BMWのアドベンチャーにはフラッグシップ

R1300GS。重量は258kg、価格もプレミアグレードで285万円。私には試乗すら考えることもできない存在です。そして、もう少し近寄れるのが、F800GS

そして、F900GS

それでも車重と価格は800で238kg・138万円、900だと219kg・204万円にもなります。私のようなシニアにはこのクラスでも縁遠いバイクたちでした。
ところが、BMWは重量が178kg、価格は最高グレードでも103万円(税込)という信じられない安さと軽さでミドルクラス(420cc)のアドベンチャーを出してきたのです。しかもETCやUSB、グリップヒーターまで標準装備ときては、どう考えても30万円は安い衝撃的な価格設定です。日本メーカーが利益が出ないからと放置してきた最も日本人向けのはずのクラスに、世界メーカーの余裕からかBMWがそこを取りに来たことになります。
車種構成は3タイプ3色で
エクスクルーシブ(96.1万円)

スポーツ(98.4万円)

トロフィー(103.3万円)

最上位機種のトロフィーが機能も充実し、価格もBMWブランドとしては破格であることから、このタイプが売れ筋となるはずです。
主な特長としては

爆発タイミング135度のクランクピンオフセットとバランスシャフトを採用し、パラツインながら振動を抑えた鼓動感、マグネシウムのエンジンカバーで軽量かつコンパクト化を実現。

リアのモノサスは信頼あるKYB製。リアスポーツサスには伸び側・圧側双方の減衰力調整機能装備で優れた路面追従性を実現。

フロント倒立サスもKYB製で、フロント・リアともにサスストローク180mm、オフロード走行が考慮されています。

上位機種と同じX型デイライトを備えた高性能LEDヘッドライト。

6.5インチTFTディスプレイ、3種のライディングモードを選べるトラクションコントロール搭載。

最上位機種トロフィーに標準装備のERC(イージーライドクラッチ)、クラッチ操作を省ける機構で、渋滞時やロングツーリングでは、ライダーの疲労軽減に貢献。ホンダのEクラッチに相当する新機構です。これだけでも私にはありがたい装備です。

ホンダのEクラッチは電子制御と数個のモーターからなる機構ですが、ERCは遠心クラッチを進化させた機械式で、後付けもできる機構。上下クイックシフターとの組み合わせで、試乗したジャーナリスト達も絶賛する快適な操作感とのことです。
なお、上級機種に装備される6軸IMUまではさすがに装備されませんでした。
ここで日本でのライバル、ホンダのNX400とのスペック比較をしてみます

NXはロードバイクが基調、GSは明確なオフロード系アドベンチャーの性格が良く現れています。万能性はGSに、ロングツーリングにはNXに分があるかもしれません。
なお、オプションにフラットロングのラリーシートがあり、これに換装すれば(AI作成)

一昨年のEICMAでの衝撃的なフォルムが再現できます。この未来的なフォルムこそ今回の新型GS最大の魅力かもしれません。丸山浩氏はシチリアでの試乗で、このラリーシートを絶賛されていて、本来こちらを標準装備すべきとも仰っておられましたね。


この大胆なデザインとカラーリングは、日本では好き嫌いが分かれそうですが、私には素晴らしいアートのような美しさです。
排気量も日本では合理的で、ERCのようなシニアにも優しい機構、軽く取り回しもラクで、航続距離もまずまず期待できるアドベンチャー。日本ではスズキのVスト650が切り開いてきたアドベンチャーカテゴリーに、遂に本命車種として中高年ライダーを虜にする可能性が出て来ました。
経済的で安心な国産か、リスキーだが魅力的なBMWか?故障率が高かったり、修理代が国産の数倍にも及ぶリスクで、敬遠しがちなイメージのブランドがBMWでしたが、最近では他の外国車とは異なり、開梱時に伴う約10万円の費用はかからない措置をとっています。それでも国産車にはない購入時のみの予備検査費用3万円はかかります。また、オイル交換ではBMW指定オイル5000円/Lが必須で、F450GSなら2.6リットル分でオイル代だけで13000円、工賃を含めればオイル交換だけで毎回2万円を要します。
憧れはしても、庶民であれば相変わらず高嶺の花がBMWですが、ずいぶん日本向けに企業努力がなされているようです。

例えばインド生産でのパートナーTVS
1911年創業、資本金85億円、従業員数50000人のインド最大レベルの製造企業。

今回のF450GSの先代G310GSの生産を担ってきたインド企業で、BMW初心者には待望の単気筒小型車種を安価に生産し、高い機動性と燃費の良さで、エントリー層に高評価は得てきましたが、残念ながら各種不具合やリコールを引き起こしてきました。そこで、BMWの技術指導がかなりの規模で行われ、BMW本体も電装系の弱点補強がなされてきたようです。G310GSでの各種対策を通して、品質改善のノウハウが培われて、今回のF450GSには相当活かされているものと思います。
日本では国産に比べてケタ違いの修理費に不安な顧客に向け、BMWはメーカー保証を3年も付け、定期点検さえ受け続ければ最長5年間のメーカー保証も可能としています。また、ロングツーリングにおいて旅先で故障した場合は、全国どこでも最寄りのモトラッド店が対応して、帰宅まで万全を期すロードサービスが3年間無料の恩典が付きます。こうしたBMWの戦略的アフターフォロー策があるにせよ、経年劣化やユーザー責任による故障・修理には相変わらず数十万円の出費もありうることは覚悟しなくてはなりません。
セレブではない一般的な日本人にとって、リスク含みかもしれない今回のコスパ抜群で魅力満載になったBMWの新型車であれば、初めて思い切って購入検討の対象にできるのかもしれません。
予約が始まったばかりにも拘わらず、かなりの反響で各店の割当台数枠が早期に埋まると、次期ロットの納期は来年かもしれませんが、そこはけっして焦らず、まずは実車に跨がって足付きを確認したり、できれば試乗しておく必要があると思います。具体的な購入の検討はそのあとでも遅くはないと思います。BMWのリセールバリューは旗艦車種を除いてかなり低いので、購入は極力慎重でありたいものです。
日本メーカーからはカワサキが来年にはタイ製KLE500を投入予定で、オフ車系アドベンチャーとしてF450GSと対峙します。

純国産としては、スズキがもしDR-Z4Sのツーリング仕様として、例えばジェベルを復活投入すればさらに面白い展開になります。(私の希望的AI画像)

適うことなら、庶民にとっては外車の維持費リスクを回避する、国産オフ車系アドベンチャーの登場が本当は望ましいのではと思います。
まずは9月、F450GSの実車や試乗後に追記として当記事を更新する予定です。
それにしてもBMWによる今回の新型車F450GSは、多くの日本人ユーザーの要望に応えるミドルクラスアドベンチャーの決定版=ラスボスとも言うべき傑作であり、日本企業の間隙を突いたドイツ企業の快挙です。そこで私はあえて腰の重い日本メーカーを鼓舞する意味でも、こう率直にBMWを称賛したいと思います。
Klasse!BMW
(最高だぜBMW)









































































































































