しょぼくれライフ

バイク趣味のしょぼくれた老ライダーです!高齢者の立場からの各種バイク批評のブログです。

Vストローム650ファイナル

Vストロームは今やスズキの看板車種、メーカーの広報では世界最多のラインナップにまで成長しています。そのシリーズでもっとも早く投入され、日本にアドベンチャーブームを起こしたのがこの650でした。その650も発売から11年が経ち、おそらくファイナルと思われるカラーリング変更が、2024年2月に実施されました。

赤字続きだった2輪スズキが輸出車種たったVストロームの国内販売に踏み切ったのは2013年。

ヨーロッパで培ったアドベンチャーカテゴリーを日本市場にもたらしました。この記念すべきVストこそVツインエンジンの650でした。それまでのデュアルパーパスよりもオンロード走行や長い航続距離を重視したツーリングバイクとして注目され、その後ヨーロッパでの需要を満たすため1000(その後1050)、

中国需要のためのパラツインエンジンのVスト250を2017年日本にも投入、初の軽二輪アドベンチャーとして大ヒットとなってスズキ二輪の黒字化に貢献しました。

さらにインドで250単気筒油冷エンジンのSX登場、日本にも投入され、同一排気量2機種併売となり、

一昨年からはパラツイン800が投入され一大ラインナップになりました。

スズキはかつてオフ車としてハスラージェベル・DRZという名車を社史に刻んできたメーカーですが、このVストシリーズは明らかにその伝統を現代に繋ぐ役割を果たしてきたと思います。赤字時代に車種を大幅に削ってきたスズキが、このシリーズにだけは異常なまでに傾注してきたのは、開発陣にスズキのオフ車部門出身者が多かったからなのかもしれません。

しかし、マーケット重視ならホンダの大ヒット車GB350

レブル250

カワサキエリミネーター400

こういうネオクラシックやクルーザーにも対応すべきでしたが、全く対応しませんし、その気配すらありません。近い将来出るとしても、すでにそのブームは終焉しているかもしれません。的確なマーケティングが欠落しているかのようなスズキが全力投入するアドベンチャーカテゴリーもすでにブームのピークを過ぎている可能性があります。ホンダはフラッグシップのアフリカツインには見切りを付けたかのようにラインナップ縮小を行っています。ヤマハのテネレ700も日本市場を意識していませんから、いつ販売終了してもおかしくありません。カワサキのヴェルシスもやはり短期の販売期間しか想定していません。

年々厳しくなる排ガス規制で2026年11月からのEuro5+にスズキの既存Vツインエンジンとパラツイン250は対応しないとの見方が一般的ですから、あと約3年でVストシリーズは800と250sxのみとなります。しかも800は燃料がハイオク指定、足付きも日本人を想定していませんし、SXも足付き不安があり、果たして今後もVストシリーズがスズキの屋台骨足りうるか疑問です。

アドベンチャーブームを支えたのはクラッチ操作が年々苦手になってくる中高年ユーザーかと思いますが、国産4大メーカーで唯一クラッチレバーの負担軽減に消極的なスズキとは対照的に、DCTでその需要に応えたホンダはさらにEクラッチという革命的機構を採用します。停止と発進も含めた全てのシフトチェンジでクラッチ操作不要にするこの新機構は軽二輪にも装備可能で、渋滞の多い日本では中高年ユーザー待望の変速機です。

これではますますクラッチ操作の重いスズキから中高年ユーザーは去っていくことになります。もしホンダがEクラッチ装備の新型250アドベンチャーを投入すれば、Vストは一気に劣勢になることでしょう。

そういう危機感からでしょうかスズキはアドベンチャーカテゴリーにGSX-S1000GXを投入しましたが、やはり如何せんヨーロッパ向けの車両をそのまま日本に投入しただけで、スズキ初の電子サスに200万円かけられるリッチユーザー層は限られます。

しかし、スズキの良いところはこの状況下で元祖アドベンチャーのVスト650に最後のカラーリング変更を行ったことです。日本市場を配慮して1050や800にスタンダードを出したのは採算度外視で日本企業として日本人ユーザーを大切にする姿勢の現れですが、そのスズキだからこそ、650にも安価で良心的なファイナルを用意できたと言えます。

ラストを飾るにふさわしい美しいカラーリングかと思います。価格も据え置きで3月まではETCやグリップヒーターが無料になります。味わいある国産Vツインエンジン車を新車で買える最後の機会となります。800や1050とは異なり燃料はレギュラー、スポークホイールながらチューブレス、平均的日本人には安心なシート高。高速道路渋滞で役立つローRPMアシスト。シリーズ中最も日本市場に配慮された機種でした。クルコンやスリッパークラッチもなく、ヘツドライトはハロゲンのままですし、かつての新鮮さを失ってはいますが、おそらく国産アドベンチャーの名機として後々賞賛されるであろうVストローム650は、スズキの新たなレジェンドとなる1台かと思います。なお、ツーリングメインならキャストホイールのスタンダードが合理的で、地味ではあってもラインナップに残っているのもうれしい配慮です。

さて、近所のお店に実車のXTが入りましたので、さっそく見に行きました。

有終の美を飾るに相応しい美しいカラーリングに魅了されました。スタンダードにこの配色がないのは残念ですが、国産アドベンチャーの草分けからは、古くささはあっても、それを上回る実用性の高さがあり、堂々たる威容と迫力ある存在感が漂っていました。

最後までお読みいただきありがとうございました。

追記(2024年4月13日)

中国においてVストローム250のマイナーチェンジが行われ、2024年モデルでついにアシスト&スリッパークラッチ(ASC)が採用されました。同機の有名なオーナー賀曽利隆さんですら、かつてロングツーリングで左手がパンパンに腫れた事があったほど、同機の硬いクラッチがようやく改善されます。デビュー7年にしてシニアユーザー待望の朗報!

と、したいところですが、このASC装備Vスト250は日本には入って来ませんでした。もちろん同装備のGSX250Rも日本には入って来ませんでした。ただ、後者は中国同様にヘッドライトのLED化だけは実施されました。この措置は販売店に聞いたところでは、元々両機種は単なる価格改定のみで春に2万円の価格引き上げを予定していたので、さらにASC代を上乗せするのは販売上好ましくないとのメーカー判断でASC装備は見送られたようです。しかし中国工場のラインに日本仕様だけ別過程なのは、コスト面で疑問ですから前モデル生産ストック分で販売終了するかもしれません。ただし、かつての噂では2気筒Vスト250にはインド移管説が流布されていた時期がありました。125ccスクーターが全てインド移管しているのがその根拠です。もし、その噂が本当なら2気筒250はフルモデルチェンジでスタイルが一新され、当然ながらASCも標準装備され、インド生産の安い価格で再登場となる可能性があります。

 因みに日本円と中国人民元の為替レートは10年前よりも60パーセントも円安、日本円とインドルピーの為替レートは10年前より10パーセントの円安で済んでいます。しかも中国の賃金水準はこの10年間でほぼ年率10パーセントで上昇していますが、インドの賃金水準は中国の4分の1で、賃金上昇率は半分以下。もはや日本企業の中国生産は何らメリットはなく、4輪で確固たる地位を築いたインドへの2輪移管はスズキにとっては至極当然の事なのだと思います。

 なお、当記事のVスト650も生産終了がそう先ではないとの噂もありますから、生産ストック分をもってカタログ落ちとなる事が予想されます。名車Vストローム650、いよいよ貴重なファイナルカラーということになります。

 

 

トランザルプは出たけれど

ホンダの新型ミドルアドベンチャー トランザルプ(XL750)は5月25日発売ですが、早くもドリーム店には入荷しています。そこで興味津々、私もさっそく見に行きました。

ショールームにドーンと置かれた実車はなかなかの迫力、配色も美しく久々に心躍る新型車です。

シートカラーが似合うし、頑丈なリアキャアが頼もしいです。

正面から見ると、400Xと同系統の印象を受けます。アフリカツインの弟分というよりも400Xの兄貴分、750Xでしょうか。

スキッドプレートが標準装備されていません。純正オプションだと10万円かかり高くつきます。

いかにも今風のメーターパネル。多機能過ぎて高齢者には使いづらいかもしれません。

LEDのヘッドライトが印象的ですが、テネレのようにアップフェンダーは装着できないそうです。

ミドルアドベンチャーのトランザルプは早くから情報誌でスクープされていて、巨大で高額なアフリカツインに躊躇する購買層には期待の星でした。すでにヤマハからは同一カテゴリーで前衛的なスタイルのテネレ700が2020年にデビューしていましたから、対抗馬のトランザルプもきっと斬新なスタイルとDCTを携えて登場するだろうと私は思っていたのですが、予想は全く外れてDCTは搭載せず、スタイルも1987年の初代トランザルプを踏襲した外観でした。

しかし、中身はさすが現代のアルプスローダー、ハイテク技術が散りばめられています。以下、メーカーHPより

アシスト&スリッパークラッチ

 

 

 

その他スマートフォンとの連携機能など申し分のない充実ぶりです。

ここまで魅力的なミドルアドベンチャーならマーケットはトランザルプの独壇場かというとそうはいきません。国内メーカーのスズキがやはり満を持してライバルを登場させていました。Vストローム800DE、このバイクも野心的なスタイルに、技術の粋を凝らした意欲作でした。

今やVストシリーズはスズキの看板車種であり、並々ならぬ力の入れようです。そこで両者を比較してみました。

外観は対称的でも双方ともによく似た構成です。ことにVストがVツインではなく並立になったのがVストファンには意外だったと思います。

私は店舗で両方に跨がりましたが、ローダウンしなければ不安になるシート高でした。なお、Vスト800DEがハイオク仕様なのは日本のユーザーへの配慮が足りませんし、トランザルプも日本の排気量基準を平気で4cc無視している点で疑問が残ります。フェリー料金等の不利益を上回るメリットがあるのでしょうか?

ヤマハのテネレ700、このバイクにも跨がった事がありますが、シート高875cmないしローダウン855cm。しかもアシスト&スリッパークラッチも採用せず、中高年は眼中にない日本投入でした。かつて名車DT1で日本のオフロード市場を開拓したヤマハなればこそ、オフロード性能は抜群のミドルアドベンチャーではありますが、人気の高い250ccのセローもWRも打ち捨てて、700ccというビッグオフロードしか出さないのは理解に苦しみます。

こうしてみると、オンロードでありながらオフ車仕様のVスト650XT、現行モデルは6年も前から出ていましたが、実は無視できない良くできたバイクだという事が最近分かってきました。

この2台のデータも並べてみます。

明らかにVスト650XTは車体が重く最低地上高も低く、ガレ場には入れそうにない構成です。

トランザルプ・Vスト800DEそしてテネレ700は本格的なオフロード志向のミドルアドベンチャーであって、Vスト650XTをここで比較するのはカテゴリー違いなのかもしれません。

しかし、オフロード走破性能を前面に打ち出す前輪21インチの前三者は、はたしてどれだけの日本人が日本で乗りこなせるのでしょうか?これら車重200kgを超える重いバイクでガレ場まで繰り出せる方はよほどのライダーですし、ロングツーリング主体で使おうとするなら、不相応な面が目立ちます。例えばチューブタイヤ。これだけの重量がかかったバイクがパンクすれば旅先ではどうしようもありません。私はやはりチューブレスの方が安心してツーリングできます。

オンロードメインゆえ前輪19インチであってもVスト650XTは、一見がたいは大きくても、高速道路主体のロングツーリングには、最適なツーリングバイクと評価されているバイクです。タイヤはチューブレスで安心、スポークホイールで未舗装路での振動吸収に優れ、しかも前三者よりも約30万円安い設定でありながら、純正オプションをほぼ不要とする充実装備です。バイク価格高騰の昨今ではとても良心的な価格を維持しています。

私は高齢者であり、このブログでも低排気量車中心に考察してきましたので、アフリカツイン等の大型には憧れはしますが、購入対象にはできません。

ではミドルクラスなら手が出せるかと言われたら、やはり自信がありません。高齢者なら年々クラッチ操作が苦手になりますから、期待したトランザルプがDCTを採用しなかったのはとても残念でした。その点、Vスト650XTはDCTはおろかアシスト&スリッパークラッチすらありませんが、ローRPMアシスト機能が搭載されています。この機能は渋滞時にローに入れたまま超低速でもエンストしない機能で、長い渋滞でのライダーの負担を大幅に軽減してくれますし、また立ちゴケ・Uターンゴケの防止にも役立ちます。2016年にSV650以来採用の機能ですが、恥ずかしながら私は最近までこの機能の秀逸さを知りませんでした。

アドベンチャーブームの草分けメーカーらしい的確な構成で、日本人が日本で乗るなら現実的で合理的なバイクであると、私は今回認識を新たにした次第です。スズキはエントリークラスの250ccではツーリング用に2気筒車、オフロード寄りに単気筒車と2車種用意するほどアドベンチャーに力点を置いています。

そしてスズキは貴重なVツインエンジンを国産メーカーでは唯一残していて、そのエンジンを搭載したこの650を排ガス規制Euro5に適合して販売延長しています。

デザインを変えない販売延長でしたから、おそらく次回の新排ガス基準への適応でモデルチェンジするか、さもなくば生産終了するのかなとも思います。バイク誌各誌の記事では後者の可能性が高そうです。Vツインエンジンはパラツインよりもコストもかかり、ましてやスズキのVツインエンジンは開発から20年以上経っており、厳しいユーロ6には対応できないとの見方が一般的だからです。

であれば、国産最後の傑作Vツインエンジンを搭載し、日本での最も合理的なミドルアドベンチャーは、最新3台よりも一番古くて地味なVスト650XTであり、今なら100万円という廉価。2017年発売時の95万円からわずか5万円のアップに留っています。

待望のトランザルプは出たけれど、シート高や実用性を考えると、この新型車にふさわしいライダーは限られているのだと私は思いました。国産メーカーが鳴り物入りで送り出した新型ミドルアドベンチャー3台でしたが、どこか欧米人向けのバイクを強引に日本マーケットに持ったきたかのような違和感が拭えません。

 

 

 

 

 

英国AJSブランドは日本にも合う!

私が英国AJSを知ったのは4年ほど前てすが、この新型’71デザートスクランブラー(以後デザートと略称)で大いに興味を持ちました。それは日本で久々のスクランブラーとして登場するホンダCL250/500と比較しているうちに、その魅力に気づいたからです。

ホンダファンの方には申し訳ありませんが、私にはどうしてもしっくりこないスタイルです。特に排気ルートが不自然ですし、車重が170kg超えでは重すぎます。

 その点、AJSはアップマフラーでカラーも格調が高く、何よりも本来のスクランブラーらしい軽快なスタイルが魅力です。ただ、AJSってどういうメーカーなんだろうと、クビを傾げてしまうほどなじみがありません。そこで現地イギリスのホームページを見てみます。英文の自動翻訳版ゆえ不自然な日本語ではありますが、歴史あるブランドだという事がよく分かります。

 

なるほど、ノートントライアンフにも引けを取らない名門ブランドなんですね。ただ、ブランドはイギリスでも、製造は中国であり、肝心のエンジンはヤマハYBRのエンジンをOEMで搭載しています。しかしネット上ではコピーしたものだとの情報もあり、私はAJSジャパン(アイリス・トレーディング)に直接問い合わせたところ、コピーではなく正式なOEMとの事でした。つまり、AJSの心臓部はれっきとした日本由来のパワーユニツトだという事です。私は前回の記事で格安ニコットPT125を取り上げましたが、あのエンジンはホンダのエンジンのコピーがベースになっていました。ここに同じ中国製でも価格が大きく異なってくる理由があるのでしょう。

ちなみに、ヤマハからのOEMゆえ、YBR用のボアアップキットが使えます。軽二輪ナンバー登録してでも、たまには高速道路を走りたいユーザーには重宝です。

なお蛇足ながら、AJS製品を生産する重慶中国企業AJSに加えてイギリスのMUTT製品も生産しており、MUTTの125cc、FSRMONGREL・FAT SABBATHはAJSも同一工場での生産です。新興中国メーカーの強かな戦略に、欧州の老舗ブランドが利用されている図式が見えてきます。イタリアのFB MONDIALもそうでした。まさに「虎の威を借る狐」戦略。

業界の内情とは裏腹に、名門ブランドAJSには魅力的な車種がたくさんあります。例えばカフェレーサー風のキャドウェル125、なんてハイセンス!

テンペストロードスター

クラシカルな優美さが素晴らしいのですが、この車種は日本には入ってきていません。

テンペストスクランブラー

テンペストとは砂嵐とのことです。デザートと併売しているので旧型ではないのでしょう。デザートのようにLEDライトは採用していませんが、タンク容量は16リットルもあります。

どれもクラシカルなスタイルと実用性がバランス良くパッケージされていますね。日本では大型中心で空前のネオレトロブーム。しかし小排気量を得意とするメーカーAJSなら、初老の私には最良のブランドのように感じます。

さて、私のお気に入りのデザート(砂漠の意)のカタログから見てみましょう。

 

さすがにオフロードが似合います!

装備も申し分ありません。小型てもスクランブラーの母国らしいこだわりが感じられます。

カラーは3色あり秀逸端麗なレッド以外にオレンジとマットブラックがあります。

次にスペックを、CL250(CL500とレブル250からの推測)と比較してみます。

125ccですから比較するのは無理があるかもしれませんが、小型スクランブラーとしてあるべきポジションをしっかり押さえていることがわかります。伝統と実用性をプラクティカルに追求するイギリスらしい価値観が数字に表れていて、同じく合理的でありたい日本人にも共鳴されやすいスペックです。

ため息が出るほどのかっこよさ!

125cc離れしたたたずまい!

ドリルド加工されたマフラーガード

サンダウンメタリックレッド、この美しさはもはや芸術的レベルだと思います。

タックロールがこれほど似合うバイクも珍しいと思います。

 

実車が見たいなあと思っていたところ、幸い私の街にも取扱店がありました。さっそく見に行きました。

スクランブラーらしいアップマフラーが人気なのがよくわかります。

精悍さと堂々たるスタイル、原付二種らしからぬスクランブラーぶりに脱帽です。

この個体は、既に売約済みでオーナーさんのカスタムが早くも反映していますが。

ただ私ならヒートガードをオプションで付けます。うっかり接触すると火傷するかもしれないからです。標準で耐熱布とマフラーガードが付いてはいますが、素人判断ながらそれでも不安です。夏場はよほど注意を要する配置です。また耐熱布(バンテージテープ)はマニアックな外見になりますが、雨で濡れたままにするとエキパイ腐食(錆び)要因にもなります。

 

今回初めてAJSブランドの小型スクランブラーを考えてみました。小粒ながら心憎いほどカッコいーバイクです。私もぜひ乗ってみたいです。お店によってはデザートだけで早くも10台売れたとのことで、隠れたブームを起こしていると思いました。トラディショナルな英国バイクが日本人にはいかに親和性が高いかを物語ります。

しかし、だからといってすぐに購入するかというと、そうはいきません。理由は3つあります。

1つは中国リスクです。軍事・外交、いつ何が起きてもおかしくない状況です。そうなれば貿易にどんな支障をきたすかわかりません。ブランドは英国ても実態は中国製品ですから、部品供給を楽観できません。

2つめに、価格です。円安やコロナもあって4年前よりも、10万円以上値上げされていますし、今後も値上げされます。デザートでは乗り出し53万円にもなります。もしリアキャリアやヒートガードを装着すれば優に55万円を超えます。残念ながらリセールバリューのなさを考えれば、いくら気に入っていても、購入には相当な勇気が要る価格です。

3つめに、デザートに関してはネット情報ではありますが、オイル漏れ等初期不良が目立ちます。初期ロットを避け、ある程度バグが改善された時期に買うか、あるいはテンペストスクランブラーという既存車種も検討するのが無難です。

 

課題はありながらも、日本でも小型スクランブラーに一定の需要がある事がAJSによって実証されているのですから、日本メーカーにはぜひこのカテゴリーのバイクを早急に出してもらいたいものです。

スクープ誌が報じているヤマハXSR125の日本投入、スクランブラーではありませんが、待望のネオクラ国産原付2種。出れば価格は高くても安心安全な製品であり、マーケット面で成功すれば、待望の国産小型スクランブラーの登場も期待できます。それまで待てなければ、エイ、ヤー!AJSを買いましょうか!?

Nicot PT125って何だ?

最近話題の輸入オフ車、125ccとはいえ今時税込29万円・乗り出し35万円という格安ぶり、しかし画像の通り本格的なオフ車スタイル。前後タイヤこそ19/16ながら足まわりはきちんとオフロード走破仕様。国内メーカーがとっくにラインナップから外した原付オフロードバイク。どこが出しているかというと、中国ニコット。聞いたことないなあ、というのが正直な感想です。

 ニコットHPによると、2016年設立の若い会社で、オフロードバイクに特化、使用部品の半数は自社製造。中国国内販売に加えてフィリピン・ロシア・ウクライナ・米・南ア・アフリカ諸国、そして日本向け輸出が開始されています。

メーカーのWebカタログはなかなかよく出来ていると思います。

空冷単気筒SOHC2バルブ、4段シフト、パワーボックス装備、ライト・ウィンカーともにLED。

エンジン一式はホンダスーパーカブと同じ横置き

補修部品も輸入元アライブが国内に在庫確保、迅速供給が可能。

デジタルメーターパネル、ギアポジションが付いて便利です、

スペックとしては装備重量が96kgでとにかく軽いし、シート高は875mmで細身のオフ車ゆえ万人向け車高、キックも付いてセル不調時にも安心。

オレンジ

グリーン

 

デカールもハイセンスで、なかなかやるじゃないかニコット!

そこで最寄りの取扱店にさっそく行ってみました。

実車はネット画像よりもさらにかっこいいし、乗りやすそうです。

フロントサスにはアジャスター装備

前後輪ともにディスクブレーキ、前輪にはABSも装備

エキパイにはキャタライザー装備、排ガス規制にも対応しています。

しかしカブ型エンジンは、店長さんの言うには、良く言えばコピー、悪く言えばパクリ。だから主要部品はほぼホンダの正規品を流用できるとの事で、考えようによってはパクリは便利なのかな?!、だけとパクられたホンダが放置しているのは、それだけ品質が悪いのかもしれません。

サイレンサーも初回ロットに限り、インナーサイレンサー内蔵

現地では撮り損ねましたが、やはり初回ロットには可倒式クラッチ・ブレーキレバー装備、オフ派にはたまりませんね。

跨がらせていただきましたが、サスが程よく沈むので足付きに不安はありません。クラッチレバーも柔らく長時間乗っても疲れないと思いました。残念ながらエンジンはかけられないという事で音や振動、メーターパネルなどは確認できませんでしたが、跨がった感覚としては小粒ながら純然たるオフ車で、車高も高いので逞しい走破性能が窺えました。店長さんはこのバイクで跳べますよ!と強調されてました。

 

パッと見には申し分ないバイクで、乗り出し35万円でこんないいバイクが買えるんなら買い得だと思いました。

ただ、店長さんは正直な方で、このニコットの品質はやはり価格なりのものだよ、との事でした。致命的な故障はないものの、不具合や修理は頻繁で、ある程度自分で整備でき、故障メンテナンスもまた楽しめるお客さんに買ってもらいたいとの事でした。

もし、店任せでないと乗れないなら、販売店から至近距離の客なら問題ないのかなとも感じました。

ニコットという中国メーカーの評価、そして肝心のPT125もまた、まだ最初のオーナーさんが乗り始めたばかりですから、耐久性等の評価はこれからです。もし、許容範囲の品質や耐久性ならば、入門用のオフ車として需要がありそうです。

 来年には原付免許で125ccまで乗れるようになる法改正が準備されています。125市場の大幅拡大が予想され、高い技術力のある国内メーカーはその商機にオフ車PT125やアドベンチャーNHT125のようなカテゴリーにもラインナップを広げてほしいです。

PT125は何よりもかっこいいし、街乗りもオフロードもこなせそうで、しかも格安ですから私も大いに気になるバイクです。今後のオーナーさんのインプレを早く読んでみたいものです。

 

 

 

 

ついにHero Xpulse200に乗った!


Hero Xpulse200、満を持して試乗してきました!とてもいいバイクでした!エンジン等の耐久性が国産車と遜色なければ、大いに日本でもファンは増えると思います。詳細は当記事最後にレポート。まずは以下、過去記事よりご覧下さい。

6月21日

インド最大手Hero Moto Corp(ヒーロー)の軽量アドベンチャーXpulse200は、発表された2018年から日本でも評判になっていました。私もどこか輸入しないかなと気になっていたのですが、なかなか日本に入って来ませんでした。しかし、ついにバイク館(SOX)が6月から輸入に向けて現地代理店との交渉を行っていると聞きました。日本での価格が妥当な額になるのなら、輸入に踏み切る可能性が出てきたわけで、オフ車ファンには朗報です。

Heroは日本ではなじみのないブランドです。それもそのはす、設立は1984年でまだ40年にも満たない若い会社です。しかし、年間生産台数は約2500万台、従業員数は約8600人にもなります。対してホンダは年間約1000万台、熊本製作所の従業員数が約2600人です。Heroの規模はホンダの2倍から3倍もある世界最大のバイクメーカーであり、いずれは日本市場に本格進出するはずですから、今回のSOX経由はその試金石なのでしょう。
肝心のXpulse自体については日本未上陸ですから、当然インプレも詳細記事もないので、現地インドのPRサイトを参照します。

油冷単気筒、Fi5速、前後タイヤサイズ21/18のオフロード型フルサイズ。

タンク容量は13リットル、装備重量157kg。前後ディスクブレーキ、

前輪にはシングルチャンネルのABS、

メーター内に簡易型ナビ装備。

頑丈なスキッドプレート

フロントライトはLED、シールド付き

テンダムバー付きリアキャリア装備

両側エンジンガードも装備

厳しい排ガス規制対策に触媒コンバーターが装着されて、エキパイはクランクケース下部を通っています。

しかし2019年発売当初のXpulse200はオフ車らしく、エキパイはエンジンサイドからサイレンサーに伸びていましたが、翌年には燃料供給がキャブレターからFiへ変更、その上でインドの深刻な大気汚染に対応するため、厳しい排ガス規制BS6(EURO5相当)をクリアする特大の触媒経由となりました。そのため不自然極まりないエキパイルートに変更されました。排ガス規制がいかに過酷であるかをよく示しています。

さてインドBS6(EURO5)に適応した2020年、Xpulse200は「インドモーターサイクルオブザイヤー」を受賞しています。世界の二輪市場の4割を占め世界最大のインド市場で最高の栄誉に輝いたのです。同賞は2017年にスズキのジクサー150も選出されており、Xpulseも信頼に足るバイクだとの折り紙付きになりました。翌年の2021年、排ガス規制で低下したパフォーマンスを補う、4バルブの4Vが追加投入されています。なお現地ファンサイトでは、報告された燃費の平均は50km/L。航続距離は600kmにも達しているようですから、エコ性能も相当高いようです。

日本メーカーが放棄した軽二輪空冷オフ車がインドで健在、Xpulse200は厳しい排ガス規制を見事にクリアし、フルサイズオフロードバイクとして存続、抜群の航続距離は600kmを超えるのですから、オフ車系アドベンチャーのカテゴリーでは有力なバイクです。車体は空(油)冷単気筒にしては重い車重ながら、サイズ的には日本の道路環境ではジャストサイズなのもうれしいです。
価格は円安前では日本円換算で17万円程度でしたから、この時点で日本に輸出されていたら税込28万円程度を実現していた可能性がありました。しかし現下の円安相場、輸入価格をグンと押し上げてしまうので、とても残念でなりません。
現地ホームページでは、オフ車色を前面に出してアピールしています。とてもカッコイーです。


インドの厳しい排ガス規制をクリアしているだけあって、スペック的にはややパワー不足かもしれません。またメーカーとしての信頼度も気になりますが、かつてホンダとの合弁時期があり、日本の技術を学んで成長したメーカーとのことですから、日本では無名のブランドでも存外、造りはしっかりしているのかもしれません。

4バルブの4Vにはカラーは3色で



2バルブの2Vには4色




後発の4Vは2Vとの差別化で、とてもセンスのいいカラーリングが施されてオシャレ、4バルブ化効果から高回転で性能を発揮するタイプです。2Vはカラーリングがやや地味な印象を受けますが、Xpulseを日常ユースで使うなら、中低速型の2バルブが実用的で、燃費の面からも2Vが有利かと思います。

このバイクのスタイルやスペックを考えると、驚くほどスズキのジェベル200と似ている事に気づきます。

スズキがこの名車に与えたオフ車系アドベンチャーとしてのコンセプトは、HeroのXpulseに通じると思います。言い換えれば、Xpulseはインド版ジェベルとして再来したとも言えるのです。

そのジェベルと今回のXpulseとの性能比較表です。同じコンセプトで同一排気量ですからあたかも相似形かのように酷似していますが、決定的な違いは車重、Xpulseはジェベルよりなんと30kgも重いのです。パワーウェイトレシオ(数値が低いほど俊敏な走り)は8.82kg/PSでジェベルより2.2劣り、4Vでも1.97劣ります。今をときめくカワサキのZX25Rのパワーウェイトレシオは3.97kg/PSと驚異的な数値。Xpulse200/2Vとの差は4.85にもなります。ジャンルが全く違いますからXpulseをZX25Rと比較するのは酷なのですが。ちなみに重いけど旅バイクとして人気のVストローム250はパワーウェイトレシオは7.75で、Xpulseとの差は1.07、Xpulse200はVストローム250よりも遅い致命的な鈍足バイクということになります。つまりXpulseはデータをみる限り、走りはまず期待できません。私のような高齢者には問題ありませんが、若いユーザーならけっこうストレスのたまるバイクかもしれません。

さて、日本ではジェベルはおろか国産最後の空冷オフ車セローもなくなり、日本の道路事情や日本人の体格に最も合理的なカテゴリーがもはや海外製しかないのは本当に寂しい限りです。繰り返しますが、そういう意味でHeroのXpulseはとても貴重な存在なのです。


スズキはインドでVストローム250SXを登場させており、日本での正規販売も決めています。日本仕様は2023年夏に販売が始まるそうです。そうなると日本初上陸のHeroブランドは不利かもしれませんが、カワサキのオフ車KLX230が国内販売終了、正規販売の空(油)冷オフ車が日本ではいなくなります。空冷の中国製CRF190Lが日本に入ってきましたが、乗り出し54万円で並行輸入車としては割高です。バイク館(SOX)がオフ車系アドベンチャーXpulse200の早期販売を実現し、税込車両価格30万円台半ば、乗り出し40万円台前半というような戦略的低価格を採用すれば、このXpulseはジェベルやセローの穴を埋めるべく、日本市場で受けいられる可能性があると私は考えます。

国産メーカーはラインナップを今後さらに1割削減するようですから、狭くなる一方の日本市場にあって、バイク館(SOX)のHero輸入販売が実現すれば、日本のオフ派ライダーに僅かでも選択肢を残すものであり、大いに歓迎すべきものだと思います。

追記
7月20日、バイク館(SOX)は販売を正式決定しました。4バルブは約37万円(税込)、2バルブは約35万円(税込)です。ただし、乗り出し価格はどちらも9万円アップで、2バルブでも約44万円。最短で9月の納車開始、現在予約受付中とのことです。

車両価格だけなら戦略価格ですが、バイク館(SOX)の諸経費は他社より高いので、乗り出し価格は日本初上陸のインドメーカーにしては高く感じます。しかし、オイル40L無料サービスで割高感はある程度緩和され、しかも2年間保証の安心感があります。ましてやオフ車としてはほぼフル装備である事を考えれば、結果的に妥当な価格設定かと思います。

耐久性が懸念されますが、こればかりはある程度の期間や距離を乗ってみないと分からないものです。今回、初回入荷分で購入される方は、俗に言う「人柱」の役割を担う事になります。
4V

2V

日本で全く未知のブランドを試すことになるこのXpulse200、途上国のバイクという先入観が強いと不安感を拭えませんが、インドは前途洋々のBRICsの一角であり、今後10年程度でGDPで、日本を抜き去る準先進国です。その技術水準を窺い知る良い機会なのかもしれません。

SOX店でしかメンテナンスを受けられず、メーカー保証はなく、長期の部品待ちもざらで、二束三文の下取り価格といういくつものリスクがありながらも、バイク館(SOX)で輸入車購入を検討する場合、そうしたリスクやハンディを受忍できるだけの激安価格であれば、購入に踏み切れるのです。しかし超円安相場や品薄が続けば、国内正規販売車に近い高い価格を負担しながら、リスクだけをユーザーが抱えることになります。ましてやアジア自体がコロナやコンテナ不足で深刻な生産停滞、これではバイク館(SOX)などの並行輸入業者は、日本市場のニッチ(隙間)を格安輸入車で上手く埋める事で成り立ってきただけに、たいへん厳しい経営環境になります。
ユーザーが望むような車両が入って来ない、入って来ても高価格で客足が遠のく、こうした苦境の中でのXpulse200の販売決定でしたから、ぜひ市場での高評価を得て、販売面で成功してもらいたいし、それはユーザーにとっても望ましい事だと私は思います。
まずもって早く実車を見てみたいものです。

再追記
10月8日、ついに待望の実車に会えました。
4Vの青黒

2Vの白

オフ車らしい逞しさとアドベンチャーらしい装備が見事に融和していて、使い勝手の良さを期待できるいいバイクでした。



メインカラーは白青で売れ筋かと思いますが、店頭にあった青黒もなかなか魅力的でした。

見えないクランク下のスキッドプレートは厚いアルミ製、ペラペラの樹脂製の多いライバル車よりも安心ですから、ある程度のガレ場も入れそうです。

油冷とは言いながら単なるオイルクーラーだけの事かと思いきや、この通り4Vはオイル噴射パイプを装備した文字通りの油冷エンジンですが、2Vにはオイル噴射パイプがありません。

4Vが油冷エンジンらしいというよりも、4バルブの高回転化で相当な高温になるので、オイル噴射パイプが必要なのでしょう。プラグ位置を上に移動させ、パイプが取り付けられています。高回転で回す走行頻度が高いと、個体によってはオイル漏れ、もしくはエンジンの焦げ付きが生じるかもしれませんね。4Vはある程度の走りは見込めますが、未確認のリスクがありますから、心配な方は2Vの方が鈍足でも無難な買い物かもしれません。

ABS装備で制動面でも日本の安全基準を満たしています。またブラックリムが心憎いほどの精悍さです。

フロントフォークはブーツを装着し、上部は防錆塗装が施されていています。また、アップフェンダーゆえの跳ね上げを防ぐ後方インナーフェンダーが実用性の高さを示しています。

丸目ながらLEDライト、ナックルカバーも嬉しい装備です。冬も心強い配慮です。

シート下には小物スペースがあり、ETCは余裕で収納できます。
跨がらせていただきましたが、私(身長173)には足付きに不安のないちょうどいいサイズでした。クラッチも軽く乗車姿勢が楽で、航続距離も600kmを越えますから、ツーリングバイクとして大いに期待できます。フル装備オフ車アドベンチャーが乗り出し40万円代半ばなら、初輸入の外車であってもけっして高くはないと私は思いました。

なお、お店によると、Xpulse200の速度計は前輪にセンサーを付けて計測しているとのことでした。

前述のジェベルとの比較表でお示ししましたようにXpulse200とスズキのジェベル200はよく似ていますが、ジェベルの前後スプロケ丁数(歯数)は15/45であるのに対して、Xpulseの前後スプロケ丁数は13/45です。ジェベルでさえローギアードでハイギアード化する方が多かったのですから、Xpulseはファームバイク並みの超ローギアード。フロントスプロケをせめて2丁上げる必要があります。

日本において幹線道路・バイパスや高速道路を走行すれば、相当な過回転になります。しかし速度センサーが前輪ならハイギアード化の丁数変更で速度等に誤差は生じません。Xpulse200を日本の道路事情に合わせるためのハイギアード化は構造上可能で、適合品が手に入ればユーザーには嬉しい仕様ですね。

ただ、インドホンダのバイクもそうでしたが、個体差がひどく新車なのに品質管理にムラがあり、このように白錆が見受けられる車体もありました。スターターとインマニが白錆で真っ白です。

フロントフォークのケーブルフックはどの店の個体も錆びていました。

国産車並みの完璧な品質を求める方には悩ましいインド品質なのでしょうか。購入時にはよく観察して白錆の少ない車体を選びたいですね。


なかなか軽量アドベンチャーらしい装備でスタイルもカッコイーのですが、前述比較表での厳しいパワーウェイトレシオ。200ccのエンジンだとこの車重は相当不利なので4Vが投入されたのですが、根本的には排気量をせめて50cc増やすべき車重だと思います。
 品質や加速性能にも不安がありますが、それでもXpulseはよく造られたいいバイクだと私は思います。空冷(油冷)単気筒でありながらEURO5をクリアする希少なオフ車であり、林道から高速道路まであらゆる道を駆け抜けて、日本の美しい四季を楽しめる旅バイクになる可能性が大いにあります。
HeroXpulse200を日本に入れてくれたSOXに感謝したいと思います。

再々追記
10月22日(土)。名古屋みなと店にXpulse4Vの試乗車が入ったそうなので、私も行ってきました。一番乗りだったようで、ピカピカの新車に乗る機会をいただき、とてもありがたかったてす。バイク館(SOX)での試乗はとても大らかで、30分間自由に乗っていいとのことで、4バルブの走りっぷりを体感すべく、港区らしい田園地帯にさっそく繰り出しました。



色はレッド、とてもハイセンスなカラーリングです。さて肝心の走り出しは、正直やはり鈍重です。車重がありますから当然ですが、もう少し低速での軽やかささが欲しいです。印象としては原付二種並みです。しかし幹線道路では軽二輪らしくきちんと流れに乗れました。そして、直線の長い農道に入り、アクセルをグッと回したところ、流石に気持ち良く加速していきます。やはり4バルブの効果が表れます。ただ、スプロケ交換でハイギアード化すれば、出だしも含めてもっとキビキビした走りになると思いました。このXpulseはスプロケ交換必須のバイクだと改めて思いました。

 取り回しは意外に軽く感じました。たぶん車高が低く重心が低いからだと思います。タチゴケはしにくいバイクだと思います。シートもソフトで長時間乗車にも耐えられそうです。燃費がわからないと航続距離も正確には判断できませんが、根拠はないものの今回の試乗での感じではリッター50kmはないと思います。4Vはおそらく40km/L程度、2Vでも45km/L程度ではないでしょうか。その推測が正しければ航続距離は4Vが最大500km、2Vで550kmくらいかなと思います。当初の現地データの引用値よりは少なくても、それでもアドベンチャーとしては立派な航続性能だということになります。あくまでも勘にすぎませんが。
 シールドは小さすぎます。風防効果はあまりありません。メーターバイザーだと割り切った方がいいです。インドでは人気車ですから、後々社外品のシールドが入って来るかもしれません。なお白錆については、この試乗車については

この通り全くありません。個体差が激しいですね。買うときはその点をしっかりチェックすべきです。私が現時点で思うのは、白錆はどうもインド品質というだけではなく、配置されたお店の立地や商品管理も影響しているかもしれません。

試乗してみてXpulseの良さは見た目だけではなく、真のデュアルパーパスらしさに裏打ちされた魅力ある一台であることがよくわかりました。パワーがないので爽快な走りは期待できませんが、取り回しはまずまず軽快で、高速道路も使う長距離ツーリングを、マイペースで楽しめるバイクだと実感できました。Heroのバイクは遠からず日本でもよく見かけるようになるでしょう!

試乗させていただいたSOX名古屋みなと店のスタッフの皆様ありがとうございました。

納車された方のインプレもしくはバイク雑誌での記事を早く読んでみたいものです。

これぞスズキ!R.J.CROSSOVER

2020年、スズキがフィリピンで発売を始めた新ジャンルのバイク、RAIDAR J CROSSOVER。アンダーボーンにオフロード機能を持たせた「カブ版デュアルパーパス」。面白いバイクですね。


まだまだ未舗装路の多いフィリピンの道路事情に対応した結果のクロスオーバータイプだということですが、なかなかどうして日本でも活躍しそうですし、何よりもガツンと来る個性的スタイルが魅力です。
 スーパーカブと同じ自動遠心クラッチで4速、タンク容量は4リットルですが、Fiなのて航続距離は200kmはあるかと思います。


オフロード車風にアップフェンダー、フォークブーツ、セミブロックタイヤでオフ車色を強調、インナーチューブはベース車より太く直径31mm

RM-Z風のフロントフェイス、精悍そのもの

リアはツインショックで悪路の走破性能も考慮されています。

カラーは黄・赤・黒・青の4色、メインカラーはなんといってもスズキのチャンピオンイエローで、青のシートや白のライトカウルとの配色が最も美しく感じられます。



スズキというメーカーはたまに他社ではできないドキッとする珍車、例えばGAGやRE5のようなバイクを出します。今でこそ国内販売ではそういう冒険はできなくても、需要のある東南アジアでは本領発揮してますね。このR.J CROSSOVERもそのスズキらしさが感じられるバイクです。

こういう面白いバイクは日本では手に入らないだろうと思っていましたが、MFDが輸入販売に踏み切ったとの事で、私もさっそく名古屋店に行ってみました。ワクワクしながら店内に入るや、ありましたねえ!


まるっきりオフ車のフロントなのにアンダーボーンフレームの実用バイク。キメラ(異質同体)を彷彿させる強烈な個性、ハッとしますね。私も大いに惹きつけられました。ツーリングでも林道でも悪天候でも、きっと可愛くて頼もしい相棒になるに違いありません。実際に跨がらせていただきましたが、車高は低くても、ハンドリングはオフ車そのもので、ライディングポジションもオフ車らしく上体を起こせて、開放感のある視界の広さを感じました。

機能面では

速度計・燃料計、インジケーターにはニュートラル・オイル・ウィンカー・ハイビーム、ギヤポジションはトップだけですが表示されるのでエコ運転に役立ちます。必要な機能は用意されていますね。

元々このCROSSOVERはRAIDAR Jがベースの派生車でした。

また、フィリピンにはホンダからすでに先行してXRM125というクロスオーバータイプのカブが人気でした。

そっくりなのでまるで後追いのそしりは免れませんが、それでもスズキのオフロード技術を活かしつつタンク容量を増やし、Fi化して利便性を高めての発売は、大いに評価できると思います。
日本国内でホンダはハンターカブやクロスカブというカブ版デュアルパーパスを出しています。


もうすっかり日本でもおなじみのヒット車ですが、やはり無難にまとめたコンセプトで、本当にオフロードに行くバイクには見えません。しかし、スズキのこの異端児は

本気でオフロードもこなせる仕様だと分かります。YouTubeMFDがモトクロスコースでの走行動画をアップしていて、ジャンプこそできませんが、オフ車然とした堂々たる走りっぷりで驚かされました。ダートても安定した走りでした。
現地フィリピンのホームページてもオフロード性能をアピールしています。

なかなかやりますねえ!

排気量115ccながらクラッチ操作の要らない軽量オフ車と思えば大変貴重なバイクかと思います。ただし、価格が乗り出し33万円。現地価格の2倍にもなってしまい、しかもリセールバリューもほぼありませんから、よほど惚れ込んで、乗りつぶすつもりでないと手が出ないかもしれません。しかし山間僻地を通勤路にしている方や、すれ違うバイクがカブシリーズばかりで食傷気味の方には、R.J.クロスオーバー115は一考の価値あるバイクかと思います。

並行輸入車全般に言える事ですが、国内販売のラインナップに乗らない不利益があるものの、それなりに少数派ライダーのニーズを満たし、希少価値のあるバイクに乗る満足感まで得られるのなら、割高な買い物でも踏み切れるのかもしれません。
 こんなバイクがあってもいいじゃないか!
と、思わせる一台です。

ちょっと待った!新型スーパーカブ110


ホンダの看板車種スーパーカブがモデルチェンジ、新型JA59が4月14日から発売されました。

新型はどう変わったのか、まずは外見、旧型の画像と比較すればその違いが一目瞭然です。

新型はキャストホイールです。当然タイヤはチューブレスになります。しかもフロントはディスクブレーキでABS装備。新型はパンクに強くなり、制動力も大幅にアップされています。

メーターパネルには時計・ギヤポジション・トリップ・平均燃費計までついて、ずいぶん便利になっています。
最大トルクは旧型JA44よりも0.25N.m上がって、燃費が6km/L向上しています。バイク雑誌の解説では、ホンダの設計コンセプトが従来の実用重視から、レジャー重視へと転換されて今回の大幅改良となったとの事。
 そうならば、もはや旧型のメリットを敢えて振り返る理由はないのではと思えてきますが、

    ちょっと待った!

多くの点で改善された新型なんですが、手放しで評価できない面もあります。

まず、今回採用された新型エンジン。ロングストローク化されボアスト比は1.34になりました。旧型は1.11ですからこの面だけを見れば低速重視のエンジンです。

ちなみに1982年型スーパーカブ70のボアスト比は0.88のショートストロークでした。燃費向上のため、一貫してロングストローク化してますね。旧型JA44のさらに前は中国生産のJA10、同じエンジンでも前後スプロケは14/34でしたが、日本組立のJA44は14/35でスプロケもややローギヤ化していました。厳しい排ガス規制への対応もありますが、このローギヤ化が幹線道路での鈍速感につながり、フロントスプロケ1丁上げがカブ主の定番になったのは当然の結果だったのです。しかも速度はフロントホイールのメーターギアからの計測で、スプロケ丁数の変更による計測誤差が生じないメリットがありました。

ところが、新型JA59はフロントブレーキのディスク化で、速度センサーはカウンターシャフトに取り付けられています。つまり、フロント1丁上げはメーター誤差を余儀なくされます。丁数変更が機構上できないのに、ロングストローク化です。新型のリアスプロケが1丁でもハイギア化していたら、鈍速の緩和になりますが、新型の前後スプロケは旧型と同じ14/35のままです。

新旧スーパーカブ110の変速比を見てみましょう。新型JA59が低速型である事が明白です。
旧型:1速2.615 2速1.555 3速1.136 4速0.916
新型:1速3.142 2速1.833 3速1.333 4速1.071

減速比(1次/2次)についても 
旧型: 4.058/2.5
新型:   3.421/2.5

新型はより低回転でトルクを発生させる構成です。しかもエンジン自体がロングストロークの低速型ですから、幹線道路でのクルマの流れに合わせると振動が大きくなります。
 装備は素晴らしいのに、肝心の「走り」をユーザーの好みでカスタマイズする事ができないまま、旧型より一層低速型のバイクに仕上げられていては、幹線道路を多用するユーザーには不満が出てくるはずです。

制動力アップはクルマの流れに安全に乗れるようになるはずなのに、速度が思うように伸びないのであれば、単なる宝の持ち腐れです。まだ試乗してもいないうちから、新型への疑問なんて拙速ではありますが、現在知りうる情報だけで判断すると、こんな疑念を抱かざるを得ません。


昨年考察したインドホンダのバイクCD110です。新型スーパーカブと同じロングストロークエンジンで、ボアスト比1.34も全く同じ、クラッチ操作が必要ながら、カブと同じMT4速で、燃費はカブを上回ります。タンク容量が大きく、航続距離はスーパーカブの3倍にもなります。ただ残念ながらロングストロークに加え、前後スプロケが14/42、超鈍速構成ですから日本での使用にはスプロケ交換必須のバイクです。幸い、メーターはフロントのギヤ計測で面倒な補正要らずで、使い勝手は抜群です。
 新型スーパーカブの前後スプロケは14/35なのでCD110ほど超鈍速ではありませんが、変速比や減速比はCD110よりも低速走行型になっています。ホンダは新型スーパーカブを実用本位からレジャー重視へ振ったのですから、配達や買い物での生活道路中心を志向した旧型から、幹線道路でも快適にすべき新型のコンセプトならば、ギヤ構成も見直すべきだったのです。それをしなかったのは大いに疑問です。

とはいえ、既に店頭には新型のまばゆい姿があり、多くのカブ主たちの目を引きます。

いい感じですね、私も大いに興味があります。
しかし、よくよく考えてみれば、新型に目を奪われるあまり、旧型の意義を見失うのはとても残念な事だと私は思った次第です。

 旧型JA44は前後ドラムブレーキやスポークホイールなど昔ながらのカブらしいスタイルを残す最後のスーパーカブであり、しかも最新のFi車でありながら、スプロケ交換の自由度が高い貴重なスーパーカブだったことを痛感しています。

今回は少ない情報からの記事でしたので、今後新しい情報が得られ次第、記事内容を随時更新・修正させていただきます。