しょぼくれライフ

バイク趣味のしょぼくれた老ライダーです!高齢者の立場からの各種バイク批評のブログです。

英国AJSブランドは日本にも合う!

私が英国AJSを知ったのは4年ほど前てすが、この新型’71デザートスクランブラー(以後デザートと略称)で大いに興味を持ちました。それは日本で久々のスクランブラーとして登場するホンダCL250/500と比較しているうちに、その魅力に気づいたからです。

ホンダファンの方には申し訳ありませんが、私にはどうしてもしっくりこないスタイルです。特に排気ルートが不自然ですし、車重が170kg超えでは重すぎます。

 その点、AJSはアップマフラーでカラーも格調が高く、何よりも本来のスクランブラーらしい軽快なスタイルが魅力です。ただ、AJSってどういうメーカーなんだろうと、クビを傾げてしまうほどなじみがありません。そこで現地イギリスのホームページを見てみます。英文の自動翻訳版ゆえ不自然な日本語ではありますが、歴史あるブランドだという事がよく分かります。

 

なるほど、ノートントライアンフにも引けを取らない名門ブランドなんですね。ただ、ブランドはイギリスでも、製造は中国であり、肝心のエンジンはヤマハYBRのエンジンをOEMで搭載しています。しかしネット上ではコピーしたものだとの情報もあり、私はAJSジャパン(アイリス・トレーディング)に直接問い合わせたところ、コピーではなく正式なOEMとの事でした。つまり、AJSの心臓部はれっきとした日本由来のパワーユニツトだという事です。私は前回の記事で格安ニコットPT125を取り上げましたが、あのエンジンはホンダのエンジンのコピーがベースになっていました。ここに同じ中国製でも価格が大きく異なってくる理由があるのでしょう。

ちなみに、ヤマハからのOEMゆえ、YBR用のボアアップキットが使えます。軽二輪ナンバー登録してでも、たまには高速道路を走りたいユーザーには重宝です。

なお蛇足ながら、AJS製品を生産する重慶中国企業AJSに加えてイギリスのMUTT製品も生産しており、MUTTの125cc、FSRMONGREL・FAT SABBATHはAJSも同一工場での生産です。新興中国メーカーの強かな戦略に、欧州の老舗ブランドが利用されている図式が見えてきます。イタリアのFB MONDIALもそうでした。まさに「虎の威を借る狐」戦略。

業界の内情とは裏腹に、名門ブランドAJSには魅力的な車種がたくさんあります。例えばカフェレーサー風のキャドウェル125、なんてハイセンス!

テンペストロードスター

クラシカルな優美さが素晴らしいのですが、この車種は日本には入ってきていません。

テンペストスクランブラー

テンペストとは砂嵐とのことです。デザートと併売しているので旧型ではないのでしょう。デザートのようにLEDライトは採用していませんが、タンク容量は16リットルもあります。

どれもクラシカルなスタイルと実用性がバランス良くパッケージされていますね。日本では大型中心で空前のネオレトロブーム。しかし小排気量を得意とするメーカーAJSなら、初老の私には最良のブランドのように感じます。

さて、私のお気に入りのデザート(砂漠の意)のカタログから見てみましょう。

 

さすがにオフロードが似合います!

装備も申し分ありません。小型てもスクランブラーの母国らしいこだわりが感じられます。

カラーは3色あり秀逸端麗なレッド以外にオレンジとマットブラックがあります。

次にスペックを、CL250(CL500とレブル250からの推測)と比較してみます。

125ccですから比較するのは無理があるかもしれませんが、小型スクランブラーとしてあるべきポジションをしっかり押さえていることがわかります。伝統と実用性をプラクティカルに追求するイギリスらしい価値観が数字に表れていて、同じく合理的でありたい日本人にも共鳴されやすいスペックです。

ため息が出るほどのかっこよさ!

125cc離れしたたたずまい!

ドリルド加工されたマフラーガード

サンダウンメタリックレッド、この美しさはもはや芸術的レベルだと思います。

タックロールがこれほど似合うバイクも珍しいと思います。

 

実車が見たいなあと思っていたところ、幸い私の街にも取扱店がありました。さっそく見に行きました。

スクランブラーらしいアップマフラーが人気なのがよくわかります。

精悍さと堂々たるスタイル、原付二種らしからぬスクランブラーぶりに脱帽です。

この個体は、既に売約済みでオーナーさんのカスタムが早くも反映していますが。

ただ私ならヒートガードをオプションで付けます。うっかり接触すると火傷するかもしれないからです。標準で耐熱布とマフラーガードが付いてはいますが、素人判断ながらそれでも不安です。夏場はよほど注意を要する配置です。また耐熱布(バンテージテープ)はマニアックな外見になりますが、雨で濡れたままにするとエキパイ腐食(錆び)要因にもなります。

 

今回初めてAJSブランドの小型スクランブラーを考えてみました。小粒ながら心憎いほどカッコいーバイクです。私もぜひ乗ってみたいです。お店によってはデザートだけで早くも10台売れたとのことで、隠れたブームを起こしていると思いました。トラディショナルな英国バイクが日本人にはいかに親和性が高いかを物語ります。

しかし、だからといってすぐに購入するかというと、そうはいきません。理由は3つあります。

1つは中国リスクです。軍事・外交、いつ何が起きてもおかしくない状況です。そうなれば貿易にどんな支障をきたすかわかりません。ブランドは英国ても実態は中国製品ですから、部品供給を楽観できません。

2つめに、価格です。円安やコロナもあって4年前よりも、10万円以上値上げされていますし、今後も値上げされます。デザートでは乗り出し53万円にもなります。もしリアキャリアやヒートガードを装着すれば優に55万円を超えます。残念ながらリセールバリューのなさを考えれば、いくら気に入っていても、購入には相当な勇気が要る価格です。

3つめに、デザートに関してはネット情報ではありますが、オイル漏れ等初期不良が目立ちます。初期ロットを避け、ある程度バグが改善された時期に買うか、あるいはテンペストスクランブラーという既存車種も検討するのが無難です。

 

課題はありながらも、日本でも小型スクランブラーに一定の需要がある事がAJSによって実証されているのですから、日本メーカーにはぜひこのカテゴリーのバイクを早急に出してもらいたいものです。

スクープ誌が報じているヤマハXSR125の日本投入、スクランブラーではありませんが、待望のネオクラ国産原付2種。出れば価格は高くても安心安全な製品であり、マーケット面で成功すれば、待望の国産小型スクランブラーの登場も期待できます。それまで待てなければ、エイ、ヤー!AJSを買いましょうか!?